高周波回路とスタブ

久しぶりに高専時代の教科書を眺めていたら,いわゆる工学な知識の宝庫で眠っていたハード側の学習欲求が再熱してしまったので昔の記憶を辿りながらメモをとる.高専の卒研でやったこととかも少し書く.

伝送線路

中学校や高校で学ぶような電気回路は,各部品(抵抗・コイル・コンデンサ)をつなぐ線路(電線)の長さは全く考慮されない.しかし,高周波回路では伝送線路の長さや形(パターン)によって振る舞いが変わる.いわゆる表皮効果で,高周波電流は電線の表面のみを伝わり,内部の密度が下がり抵抗が大きくなり結果として見かけ上の透磁率も下がったりする.

このように,ただの導線であっても高周波電流を扱う場合にはそのパターン・長さによって振る舞いが変化するため見かけ上の電気回路の形が変化する.パターン上にはインダクタ(コイル),スルーホール(TH)のグランド間にはコンデンサがあるように見えるため,これらを考慮した回路設計を行う必要がある.

電磁界解析中の悲劇

ちなみに電磁界解析なんかを行おうとするとパターンの配置が近すぎるだけで,お互いに電磁場が影響しあって結果がバグり始める(三日くらいハマった).

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当初の設計図

設計当初はこんな感じの配置にしようと考えていた↑
最終的には,二本並んだスタブが干渉し合うため,上下に分けることで解決した↓

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Sonnetで電磁界解析しながら調整した結果

ちなみにこの回路基盤の特性はこんな感じのバンドパスフィルタ(BPF).

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BPFの特性

高周波回路におけるコンデンサキャパシタ)とコイル(インダクタ)

高周波回路でコイルを使うなんてことは基本的には現実的でない(村田製作所さんの高周波用インダクタは数GHzまでOKらしいが,お金ないので工夫をこらすとする).ここで大事になるのが,高周波回路では伝送線路でも特性を持ってしまうという制約を,仮想的コンデンサやコイルを生み出すことが可能であると前向きに捉える発想力です.

伝送線路を意図的に配置することで,仮想的なコンデンサやコイルを配置してしまおうというのが,スタブという考え方の根幹になると思っています(持論なので諸説ある).

無損失回路を想定する場合の入力から見た負荷側のインピーダンスは,
 Z_{in} = Z_o \frac {Z_L + jZ_o tanθ} {Z_o + jZ_L tanθ}
と表現される(導出は省略する).
 Z_{in}: 入力インピーダンス,  Z_L: 負荷インピーダンス,  Z_o: 伝送線路の特性インピーダンス,  θ: 電気長

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伝送線路

伝送線路上では,オープンスタブはコンデンサ,ショートスタブはコイルとして表現できる.

オープンスタブ

オープンスタブの場合は負荷インピーダンスを解放することで得られる.

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オープンスタブ

基礎公式上では, Z_L → ∞となるから,
 Z_{in} = \frac {Z_o} {jtanθ}
ここで,この伝送線路をコンデンサとしてみなすのだから,入力インピーダンスコンデンサインピーダンスと等価になるはずなので,
 \frac {1} {jωc} =  \frac {Z_o} {jtanθ}
 C = \frac {tanθ} {ωZ_o}
となり,オープンスタブで実現したいコンデンサ容量を電気長θと特性インピーダンス Z_oによって記述することができた.

ショートスタブ

ショートスタブの場合は負荷インピーダンスを短絡することで得られる.

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ショートスタブ

基礎公式上では, Z_L → ∞となるから,
 Z_{in} = jZ_otanθ
ここで,この伝送線路をコイルとみなすのだから,入力インピーダンスはコイルのインピーダンスと等価になるはずなので,
 jωL = jZ_otanθ
 L = \frac {Z_otanθ} {ω}
となり,ショートスタブで実現したいインダクタンスを電気長θと特性インピーダンス Z_oで記述することができた.

疲れたのでここまで…大学に入ってからハード側のTHE工学に触れるのが久しぶりすぎてかなり追うのが大変だった…